お客様と同じ情報量を持つことが営業の出発点

【第2章】ルート営業こそ、営業の王道だ!

2.お客様と同じ情報量を持つことが営業の出発点

広告代理店は、TV・新聞・雑誌の広告枠を販売すること、各メディアの媒体特性を活かした広告戦略を提案することが仕事です。
いわば「メディア枠の販売」と「広告の企画・アイデアの提案」で商売しているわけです。
もちろん、新人の私には、大規模な広告戦略をプランニングする力はありません。
そういうジャンルは優秀な先拙たちが担当していましたし、岐初は下働きです。

博報堂には新人の1年間はマンツーマンで指導を受ける「トレーナー・トレーニー制度」がありました。
先輩のカバン持ちのような位世づけで、広告業界やマーケティングのことを学習し、クライアントの業務を理解していく。
小さい案件をまかされながら、だんだん仕事を覚えていくというシステムがとられていました。

そんな中で、私が始めたのが「クリッピングマン」になることでした。

指示されたわけではありませんが、アサヒビールの新聞・雑誌広告、キャンペーンで使われたパンフレットなどを自発的に集めました。
当時のアサヒビールは、1987年にスーパードライが発売されて以来、快進撃を続け、広告出稿量も非常に多いクライアントでした。

これらをすべてファイルしておいたので最初はアサヒビールー社だけだったのですが、そのうち、キリン、サッポロ、サントーといった競合他社の広告類まで集めるようになり、最後にはPOPやのぼりなどのSPシールまでストックしました。
これが思いのほか、好評だったのです。

アサヒビールは人事異動が多い会社で、定期異動の時期にはメンバー一新というケースも珍しくありません。担当者が、めまぐるしく入れ替わります。
そういう環境の中、「工藤くん、去年の春のキャンペーン広告だけど」と聞かれたら、「ああ、これですね」とすぐ引っ張り出せるので、重宝がられました。
当然、先方にも保存されているはずですが、私に言えば電話1本で取り寄せられる。新しい担当者ほど、「博報堂の工藤に聞いたほうが早い」と思います。

そもそもは駆け出しの自分のために始めたことですが、知らず知らずのうちに、「ウチの広告展開に精通している工藤」として認知されるようになりました。
実際、軽い気持ちでスタートしたものの、「クリッピングサービス」は非常にいいアピールポイントになって信頼につながり、担当者から「今度のキャンペーン、いいアイデアない?」と相談されるようになったのです。

その中で実現したのが、現在は一般的になった立体型店頭ポップのキャンペーンです。

提案するチャンスをいただき、プレゼンしたら「おもしろい!」とトントン拍子で進み、採用になりました。史上最高額22億円ものキャンペーンが実現したのです。

 
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