ダブル3Cモデルで顧客の視点を理解する

【第2章】ルート営業こそ、営業の王道だ!

4.ダブル3Cモデルで顧客の視点を理解する

広告のクリッピングがよかった理由は、2つあります。

●その1クライアントの広告戦略を理解できたこと。
●その2競合他社の動向も含めて、ビール業界全体の動きを理解できたこと。

営業マンはどうしても視点が「自分本位」になりがちです。自社と顧客の関係、自社と同業他社との関係しか見えていない。

つまり、顧客に対して、自社の製品・サービスをどう売り込むか。競合する他社の動きのリサーチ(たとえば、新製品の発売情報、スペックの比較、価格や値引きなど)のみに終始していることが多いのです。
しかし、これだけでは、視野が狭過ぎます。

そこには「自社商品やサービスが、お客様のビジネスにどうお役に立つか」という視点がありません。
顧客を「ご購入先」としてもてなしながら、ターゲットとしか考えない功利主義、あるいは同業他社との横並び主義だけが感じられます。
「Win~Winの関係」をつくろうとせず、自分のビジネスだけに終始していても、顧客の信頼は得られず、売上げにも結びつかないでしょう。

●自社のPRだけをする営業マン
●見込みがないと知るとさっさと引き上げる営業マン

訪問販売やテレアポなどによくある、この手の営業を苦々しく思うのは、こちらの都合や立場も考えず、一方的な論理で話を進めようとするからです。
ルート営業が単なる「モノ売り営業」や「ご用聞き営業」になってはダメです。

ところが、顧客側の視点がすっぽり抜け落ちたまま、営業活動を続けている営業マンは少なくありません。
こちらと同じように、クライアントにも顧客があり、同業他社があり、その関係の中で動いているという認識が欠落しているのです。
それをわかりやすく図式化したのが、「ダブル3Cモデル」です。

営業マンは、左下の三角形の中で活動しているわけですが、クライアント側の興味・関心は右上の三角形です。

つまり、自社のビジネスだけではなく、顧客を取り巻く環境とビジネスを理解して活動することが重要です。
そこを押さえないとコミュニケーションもうまくいきませんし、どういうアプローチで売り込むかも見えてきません。
私が新人時代に始めた「クリッピングサービス」は、図らずも「ダブル3Cモデル」を自然に理解するものでした。
顧客が倣烈なシェア合戦をしているのですから、飲食店や居酒屋にもよく飲みに行きました。
実際、何軒か回ると、キリンやサッポロが強いお店、アサヒビールが食い込んでいない地区が見えてきました。

マスターや店のオーナーにヒアリングして、お店ごとのビールの売れ筋を調べたり、「あそこのエリアはアサヒビールの営業マンがあまり来ないらしいですよ」と情報をキャッチして伝えたりもしました。
営業に直結するニュースを提供すれば、もちろん喜ばれます。「お役に立てれば」と思う気持ちからですが、これを繰り返すうちに工藤個人への信頼が深まったと思います。
広行部、宣伝部だけでなく、営業部とのつながりも生まれました。

私も広杵業界に慨れてきて、「新人の工藤ちゃん」ではなくなり、少しずつ大きな仕事をまかされるようになってきた時期でした。

顧客に役立つ情報を提供し、問題を理解して提案する力を持ってこそ、自分自身のビジネスも広がります。
顧客と深くつきあえるのは、長い取引のあるルート営業の強みです。
営業マンのやる気次第で、売上げアップの可能性はかなりあると知ってください。

22億円という大きな金額につながったキャンペーンも、営業部とのつながりができたからでした。
それまでは広報部と宣伝部中心の取引だったのですが、「ダブル3Cモデル」で周辺情報を丹念にリサーチしたおかげで、先方の営業部隊と連携する道筋ができ、ビジネスの可能性が広がりましたc
「ダブル3Cモデル」は、営業マンが押さえるべきフレームワークです。
このモデルをぜひ自分の立場にあてはめ、見直してみてください。
きっと新しいアプローチの糸口が発見できるはずです。

 
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