知識がなければ説得力のある営業はできない
【第3章】新規開拓営業で売上アップ!
2.知識がなければ説得力のある営業はできない
2000年、私は博報堂出身の先誰が設立したITベンチャー、ガーラに蝋職しました。
当時はIT業界の黎明期、サイバーエージェントが止場し、ライブドアの前身である、
オン・ザ・エッヂが注Ⅱを集め始めた頃でした。博報堂ではクライアントとの関係もよく、順調でしたが、広告業界もビール業界もすでに成熟産業。ダイナミックな変化はそうありません。
新しいビジネスを開拓していく成長産業に身を置いて、自分の可能性を試してみたいと考えてのことでした。
ガーラでは最初、「インフォ@メール」というメール広告媒体の営業を担当しました。
オプトインメールと呼ばれていた手法で、数十万におよぶ会員のデータベースの中から、顧客のニーズに応じてセグメントした宛先にメールを配信するもので、メール広告自体、まだまだ珍しい時期でした。
ところが、この数万円程度の商品がまったく売れない。
1日に何件もアポを取り、説明に出向くのですが、なかなか成約できません。「博報堂で、億単位の取引をしていたオレが・・・」と打ちのめされました。
しかし、考えてみれば、インターネット自体、今ほど普及しておらず、商品にもなじみがない。そのうえ、売り込みにくるのがよく知らない企業の営業マンです。
しかも私自身はIT関連の知識があやふやで、商品の特性もうまく説明できない。客観的に見て、商談がやすやすと成立するわけがありません。
そんな状態なのに、信頼を得ようと焦って「私は、御社の社長と同じ博報堂出身で」などと繰り返しても、お客様にはまったく刺さりません。
新規開拓の場合、前提となる信頼や情報がないわけですから、商舶自体の説明を丁寧におこない、お客様のビジネスにどうお役に立つかをしっかりアピールするところから始めるべきだったのでしょう。
私が苦戦する中、成果をあげているSさんという先輩がいました。観察すると「イベントを告知する時にポスターを掲示したり、チラシを配布したりするでしょう。オプトインメールというのは、ネット上にばらまくチラシのようなものなんです」
など、お客様がイメージしやすい例をあげて説明していました。
私も見よう見まねで、セールストークに織り交ぜると、少しずつ成果があがりました。
費用対効果やレスポンス率などを聞いてくるお客様には、数字をあげて説明できる資料を作成。同業他社の小例を出すのも効果的だと知りました。
具体的な裏付けがあると、ビジネスに貢献する目安が提示できるので、ぐっと説得力が増すのです。
新しい業界ですから、お客様への「啓蒙営業」も必要でした。勉強が足りないことを思い知ったので、会議のたびに専門用語を抜き出してノートをつくり、開発担当者からもレクチャーを受けて、知識を蓄えました。
それを続けるうちに、お客様がピンと来る例や比愉が出てくるようになりました。疑問・質問にも的確に回答でき、知識の蓄積が結局、営業活動にもプラスに作用したのです。
セールストークやコミュニケーションだけで営業はできない。
商品知識・業界知識の裏付けがないと、成果はあがらない。
そんな当たり前のことを悟ったのもこの時代でした。
ビール業界の商品なら、だれもが知っています。競合も4社しかありません。
しかも、代理店の仕事は、今までにない提案、プラスアルファの企画やアイデアが尊重される業界だったのです。
それなのにIT業界で、同じようなスタンスで常業していれば、光れるはずがありません。そもそも根本的な常業力が身についていなかったと痛感しました。
成熟産業のルート営業しか経験がなかったため、新規開拓に必要な集客、価値設計というスキルが欠落していたのです。