お客様を理解しなければ信頼関係は生まれない
【第2章】ルート営業こそ、営業の王道だ!
3.お客様を理解しなければ信頼関係は生まれない
結果的に「クリッピングサービス」は信頼のベースになっただけでなく、知識の蓄積にもつながりました。
アサヒビールだけでなく、ビール業界の動向を理解していることで、顧客のニーズがわかり、他社に先駆けての提案ができたと思います。
お客様を知る。これは営業マンにとって非常に大切なことです。
新人の頃、印刷物に使うロゴの位置や色指定などを間違えたりすると、「ウチのことがわかっていない」とよく注意されました。
CIに厳格な規定がある会社ですから、当然の指摘です。
しかし、先方にとっては、実務的な処理能力以前の問題として「担当者なんだから、それぐらい把握しておけ、使えないヤシだな」という暗黙の非難です。つまり、
ウチのことを知らない=顧客のことを真剣に考えていない
と判断されてしまうのです。これは営業マンにとっては致命的です。
ルート営業の場合、同じ顧客と繰り返し接触します。だからこそ、自社にとっての「常識」を知らない営業マンは評価されません。お客様のことを理解し、共通言語で話せるようにならなければ、信頼は得られないでしょう。
特にビール業界は事実上4社しかありませんでしたから、他社の動向には常にアンテナしれつを張っていました。おたがいの戦略を探り合い、熾烈なバトルを繰り広げているのです。
そんな業界ですから、「キリンのアレだけど」と言われて「えっ、なんですか?」という反応ではとても務まりません。
クライアントと同じ視点と情報を持って、初めてコミュニケーションが成立します。社員でなくても社員並みに話せることで、グッと信頼感が増すわけです。
そのうえで、広告代理店としてのアドバイスや提案をしなければ、受け入れられないと身をもって知りました。